2003.12.05 RAM LAB(田口卓臣 編)

大江健三郎「私は怒っている」
(Libération française, 2003年12月1日号)
Je suis en colère
Kenzaburo Ooe

01 december 2003

【原文】 http://www.liberation.fr/page.php?Article=161507&AG


【概要】
小説家 大江健三郎はいう。「私は怒っている」と。日本の首相 小泉純一郎がイラクに自衛隊を派遣しようとしているからだ。多くのジャーナリストたちの質問にたいして、小泉首相はあいまいな返答をくりかえすだけである。その一方で、アメリカによるイラク攻撃が開始されて以来、ブッシュ大統領やラムズフェルド国防長官が来日した最近にいたるまで、小泉首相はひたすらアメリカにしたがう態度をとりつづけてきた。大江は、彼の亡き友人エドワード・サイードの、次のような言葉を引用する。「政治的な観点および国際関係の観点からみて、もしアメリカ合衆国の横暴にひたすら追従している国家・国民がひとつだけあるとするなら、それはまちがいなく、日本および日本人である。」(『文化と帝国主義』)そして第二次大戦後50年の歴史のなかで、日本のアメリカ追従がいまほどひどかったことは一度もない、と大江は診断する。

大江によれば、21世紀の現在、世界がとりのぞくべき最大の暴力とは、核兵器と国際的テロのふたつである。この目標にとって、いかなる例外的な国も理由もあってはならない。それはイラク、イラン、北朝鮮にたいしてだけではなく、アメリカを含む全世界にたいして求められねばならないことである。

他方、日本がなすべき「イラク復興支援」とは、兵隊をおくりこんでアメリカ軍を「支援」することではない。すでに数千以上にのぼるといわれている罪のないイラク人死者がこれ以上増えないように、食料・医療面で「人道的な支援」を提供することこそが最も重要であるはずだ。今後、小泉首相が、「自衛隊を派遣すること=テロと闘うこと」という短絡的な考えのもと、イラクへの自衛隊派遣を断行すれば、日本国内へのテロの危険性はきわめて深刻なものとなるであろう。たとえば東京のような大都市は、パリやニューヨークなどと同様、そのあまりの大きさゆえに、テロにたいしてはきわめて無防備で、傷つきやすいからだ。

以上の大江の主張は、小泉首相が呪文のようにくりかえす「国際的貢献」「責任」といった無内容な美辞麗句にたいして、真の「国際性」とはなにか、真に果たされるべき「責任」とはなにか、を厳しくつきつけている。ほんとうに「国際人」たろうとするなら、フランスやドイツをふくむ世界の圧倒的大多数とともに、アメリカに「NO !」を言わねばならないはずだ、と大江は考える。

【抜粋】
「日本の兵隊をイラクにおくることは、とても特殊な選択である。全世界をみれば、イギリスは例外として、大多数の国々は戦争に反対を表明した。多くの国々が、この戦争がひきおこす状況にたいして賛成しなかった。この意味で、日本の総理大臣は責任意識を欠いた少数のものたちのひとりだと言える。小泉首相はアメリカ合衆国の政策に全面的に賛成している。そして大半のジャーナリストや知識人たちは首相に反対する能力がなくなっているのだ。」

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